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小説「シルクロードの滑走路」を読みました

最近は外が寒いこともあり、土日は家にいることが多くなっています。家にいる場合、NetflixYouTubeを見るか本を読むことが多いです。

 

先日、前々から気になっていた黒木亮さんの小説「シルクロードの滑走路」を読みました。

 

同じ作者の有名な小説「トップ・レフト」や「巨大投資銀行(バルジブラケット)」などは読んだことがありました。これらの小説はいわゆる外資系金融の世界が書かれており、実際のモデルがいるものの平凡な日常を送っている私からすると少し現実離れしていると感じてしまうものでした。もちろん内容は面白かったです。

シルクロードの滑走路の書評

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今回読んだ「シルクロードの滑走路」は、航空機ファイナンスをテーマに描かれており、読んだ感想としてはこういった案件はいい意味で結構ありそうだなと思いました。航空機ファイナンスとは、ボーイングなどの航空機製造会社から航空会社が機材を買うときに使われる手法であり、航空機自体が生み出すキャッシュフローを当てにして銀行などが融資を行うというものです。航空会社としては直接の負債とはならずに、オフバランス(バランスシートに記載しない)ことができるというメリットがあります。

 

ネタバレになるような詳しい内容は語りませんが、交渉や泥くさいドキュメントの確認など詳細に書かれていてさすがに国際協調融資プロジェクトファイナンスを実際に経験されている方が書かれているだけあってリアルだなと感じられました。作者の方は三和銀行でこれらの業務に関わり、その後三菱商事のロンドン支店でプロジェクト金融部長までされたそうです。金融機関と商社ではこれらのプロジェクトでの立ち位置も違うと思いますので多角的にこのような事業を見ることができて羨ましく思います

 

華やかな金融小説だと思って読むとがっかりされる方もいるかもしれませんが、実際のストラクチャードファイナンスの現場も華やかなディールの裏には、関係者間の調整、英語でのドキュメント作成など泥臭い仕事がほとんどであると聞きます。そういった意味でも実際の案件の裏側というものを感じられて個人的には面白かったです。

 

航空機ファイナンスとは

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小説を読む際には航空機ファイナンスの知識が多少なりともあったほうがいいと思いますので、ここで少し航空機ファイナンスについて解説してみようと思います。

 

航空機ファイナンスとはストラクチャードファイナンス(仕組み金融)の一種です。仕組み金融といっても難しいものではなく、企業に対する一般的な融資(コーポレートファイナンス)とは違って、製品やローンなどの資産(アセット)に対してその特徴を活かして融資を組成(ストラクチャリング)するというものです。たとえば担保となる資産ものが航空機ならば航空機ファイナンス、船ならば船舶ファイナンスやシップファイナンスなどと呼ばれています。

 

航空機というそれ自体がキャッシュフローを生み出すものを担保としているため、運航する航空会社の信用力や財務状況に左右されることなく、航空機を購入することができるという点がメリットです。ほとんどの航空会社は、一機数百億円とする航空機を現金で買うこともできなく、ローンを組む場合は会社のバランスシートを圧迫してしまうためこのような手法がとられています。

 

そのスキーム(手法やお金の流れ)などは案件によっても異なるのですが、リースの形を取ったり残価設定型のものがあったり、自動車やバイクを取得する場合と似ています。

 

一般的なスキーム

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まず特別目的会社(Special Purpose Company:SPC)を作ります。この特別目的会社はいわゆるペーパーカンパニーで何か特定の事業を行うわけではありません。ペーパーカンパニーというと一般的には悪いイメージですが、悪用するわけではありませんしこのようなスキームのためには良くつくられます。ただ会社の名前に関しては何でもいいので結構ふざけた名前とか、面白いのは組成するバンカーの息子の名前ペットの名前を付けたりすることもあるようです。

 

SPCを作ったら、銀行などのレンダーはその会社にお金を融資します。そのお金でSPCは航空機を購入し、銀行はそれを担保にします。仮にローンの支払いが出来なくなった場合は、航空機を押さえればいいので銀行としてもお金が貸しやすくなります。そしてSPCはバックにいる航空会社にその航空機を貸し出します。航空会社はSPCにリース料を払いますのでそのお金をもとにSPCは銀行にお金を返します。

 

エチオピア航空についての記述

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また印象に残ったのが「エチオピア航空」に関しての小説内の記述でした。物語とは直接関係ないのですが、エチオピア航空の話が出てきておりそのビジネスが素晴らしいとされていました。

 

エチオピア航空はアフリカを代表とする航空会社で、そのエチオピアという国のイメージと裏腹に規模が大きく、最新鋭の機材なども導入しており勢いのある航空会社です。また現時点でアフリカから日本に就航している唯一の航空会社です。

 

この航空会社の稼ぎ出す外貨はこの国にとって重要で、輸出額の四分の一に相当すると書かれています。そのためか政府もこの航空会社には大きく介入できずに独立性が保たれているそうです。エチオピア航空は、ハブ・アンド・スポーク方式にアフリカの航空会社でいち早く取り組み今の地位を築いたそうです。また国民性も真面目な人が多いようです。

 

私自身が実際にソースを探したわけではないので、どこまで本当なのかはわかりませんが、この小説を読んでからエチオピア航空に興味を引かれています。成田から香港までの以遠権区間もあるのでいつか乗る機会があったらいいと思います。

 

確かに航空業界は人口のそこまで多くない国の航空会社であっても存在感があります。例えばターキッシュエアラインズKLMオランダ航空などですね。日本はこれらの国より人口こそ多いですが、世界でのプレゼンスは弱いとは言わざるを得ません。ただ内需が大きいので売り上げは大きくなっています。

 

さいごに

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航空機ビジネスや航空業界を取り上げた小説は多くはありませんが、探せば結構ありますし、今後も適宜紹介していきたいと考えています。今回の「シルクロードの滑走路」は登場人物同士の思惑が渦巻いており、実際の案件でもありそうだなと思ったので、内容がよりリアルに感じられました。興味を持たれたらぜひ読んでみてください。